「花粉症」
花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉を吸い込むことによって起こるアレルギー性の病気です。いったん症状が出ると毎年絶え間なく流れる鼻水や頑固な鼻づまりに悩まされることになり、心ときめく桜の季節をうっとうしい気分で過ごさなければなりません。
 特に昨年夏の猛暑の影響で例年の2倍以上の花粉が飛散すると予測されている今春は、万全な花粉対策をたてて乗り切りたいもの。このページでは花粉症発症のメカニズムから最新治療法、花粉を遠ざける生活法などをQ&A形式で紹介します。
回答者:州崎 春海 昭和大学医学部耳鼻咽喉科教授。専門は鼻アレルギー、副鼻腔炎、嗅覚などの鼻科学の基礎的研究と臨床。
情報提供:大正製薬
大人になって突然、花粉症が起こるのはなぜ?
 抗体が一定量に達してはじめて発症するため
花粉症は花粉を吸い込むことで起こる病気で、発症にはIgE抗体(免疫グロブリンE=花粉などに抵抗して体内に作られる反応物質)」を作りやすいアレルギー体質が関係しています。
 最も患者数が多いのはスギ花粉症ですが、スギ花粉に対するIgE抗体が発症に至る量まで体内に産生されるには通常20〜30年かかるといわれています。しかし、体質や吸い込む花粉量の違いにより、発症までの期間は変わってきます。また、環境も発症に関係しています。

花粉症が発症しやすい環境があるの?
 大気汚染や住環境、食生活が関係します
スギ花粉症は、スギの木が多い山間部より都市部に患者数が多いことからわかるように、発症には人工的な都市型の生活環境が影響すると考えられます。具体的な誘因は次の通りです。
●大気汚染(窒素酸化物やディーゼルエンジンからでる細かい粒子)。
●アスファルト道路(落ちた花粉がつもり、ビル風や車に舞いあげられるため)。
●気密性の高い住環境(ダニ、カビ、ハウスダストの増加)。
●食生活の欧米化による高タンパク食や加工食品の増加。

アトピー性皮膚炎の人に起こりやすいのは本当?
 アトピー体質を持つ人は注意が必要です。
 アレルギー疾患の中で遺伝的な要素の強いものを「アトピー疾患」と言います。アトピー疾患の人は、IgE抗体を作りやすい体質持っているため、いったん1つのアレルギー疾患にかかると、その後もアレルゲン(抗原)の違うアトピー疾患にかかっていく可能性があります。ですから幼児期にアトピー性皮膚炎や喘息にかかった人は、体質的に花粉に対してもIgE抗体を作りやすく、花粉症にかかる危険も高くなります。

花粉がたくさん飛散するのはどんなとき?
 雨が降った翌日で晴れ上がった日は要注意
 1 日に飛び交う花粉の量は、前夜から当日の天気によって異なります。花粉量が最も多くなる天気は、前日、気温が上がった後で降り続いた雨が翌朝あがり、カラッと晴れ上がったとき。気温の上昇と湿度の低下が同時に起こるためで、前日、雨によって飛散しなかった花粉も加わって、飛散量は通常の倍に増えます。乾いた南風が強く吹く日も、風に乗って周辺地域の花粉も運び込まれるために花粉量が増えます。1日のうちでは午後1〜3時がピークに。

飛散開始日と症状が出始める時期にはずれがあるの?
 個人の感受性などの違いや重症度でずれてきます
 スギ花粉は、通常2月上句に九州で飛び始め、しだいに北上していきます(スギ花粉前線)。
 スギ花粉が飛び始めて、すぐに症状が出るかどうかには個人差があります。これはアレルギーの程度などによりスギ花粉に対して症状が起こる感受性が一人ひとり違うためです。
 花粉が飛び始める時期をあらかじめ知って、早めにマスクをしたり窓を閉めるなどの対策をとると症状が出にくくなります

前年の天候と花粉症の関係は?
 前年の夏、猛暑だと花粉量は倍増します
 スギは1本の木に雄花と雌花が別々についていて、風を使って受粉されます。7〜9月ごろ、最高気温が高く日射量が多い猛暑が続くと、雄花の芽が活発に発達してつぼみをたくさん付けるため、翌年の春の花粉量が増えるのです。逆に冷夏だと雄花の芽の生長が悪くなるので、花粉量が少なくなります。
 花粉が飛散する時期に関しては、その年の1月〜2月初旬の気候に左右されます。暖冬で最高気温が高い日が続くと、開花が早くなるために通常より早く花粉が飛び始めますし、強く冷え込む日や雨の日が続くと、花粉飛散開始日も遅くなります。
 これらの気象条件に加え、花粉捕集器で観測した花粉飛散状況をもとに「スギ花粉前線図」が発表されます。

花粉症の症状は?
 くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ
 空気中に飛散している花粉は、まず鼻や目の粘膜に接触し、アレスギー反応起こします。そのため、花粉症になるとくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなど鼻と目の症状がでます。
それ以外にものどや気管、皮膚、耳、消化器の症状に加え体のだるさ、熱っぽさなど全身症状が現れることがあります。

 
 花粉症の合併症の1つに気管支ぜんそくがあります。鼻の粘膜にはフィルター機能があり、外からの侵入物を阻止する働きがあります。ところが多量の花粉を吸い込むとフィルター機能が問に合わず、花粉が気管や気管支にまで到達してゼイゼイと息苦しくなることもあります。しかし、スギ花粉だけでぜんそくを起こす例は多くありません。
 

花粉症になると鼻の中はどんな状態になるの?
 鼻粘膜が赤くなり腫れ上がります
 花粉症の人の体内には花粉に特異的に反応するIgE抗体がつくられ、この抗体は血液中に流れ込み鼻腔や目、体内のあちこちの組織にばらまかれます。
 鼻腔や目の粘膜にたどり着いたIgE抗体は粘膜にある「肥満細胞(マスト細胞)」や「好塩基球(白血球の一種)」の表面につき、そこに居座って花粉がやって釆るのを待ちます。花粉ンーズンになり、多量の花粉が鼻腔や目の粘膜に入り込んでくると、待機していたIgE抗体は即座に花粉をつかえ、肥満細胞の表面で「アレルギー(抗原抗体)反応」を起こします。すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、神経や血管を刺激して、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を引き起こすのです。
 鼻水の中には白血球の一種で、体内の異物を排除する働きをする「好酸球」がアレルギー反応によって増加します。健康な人の鼻粘膜はやや濃いめのピンクで、表面は滑らかです。ところがアレルギー症状が起こっている鼻粘膜は、「発赤」といって、全体がやや赤みがかって少し腫れ上がっています。
そして、鼻腔全体に水のように透きとおった鼻水がいっぱい充満しています。


花粉症と鼻かぜのとの見分け方は?
 花粉症は微熱が出ても高熱はでません
 目のかゆみを伴う花粉症の場合は判断つきやすいのですが、目の症状が出ない花粉症は、かぜととてもよく似ています。花粉症の症状は花粉シーズンが過ぎれぱ治まりますが、シーズン中はかぜと思い込む人も少なくありません。
 あえて違いをあげるなら、花粉症は熱っぽさや微熱が出ることがありますが、かぜのように38度を超すような高熱が出ない点です。


目のかゆみはどうしておこるの?
 ヒスタミンが知覚神経を刺激するため
 目がかゆい、充血する、涙が出るなどといった「アレルギー性結膜炎」の症状も、花粉症の人のほとんどにみられます。
 目のかゆみが起こるメカニズムはくしゃみや鼻水など鼻の症状が起こるときの反応とほぼ同じです。
 目の粘膜に花粉が付くと、粘膜の肥満細胞に存在するIgE抗体とアレルギー反応を起こします。この刺激によって肥満細胞からヒスタミンなどが放出され、知覚神経を刺激して目のかゆみが起こります。ヒスタミンが血管に届くと血管がむくんで結膜(白目の部分)の充血が起こります。また、目の粘膜に付いた花粉を洗い流そうとして涙が流れます。
 かゆいからと目をこすり過ぎると結膜や角膜(黒日の部分)を傷つけてしまうことがあります。さらには、「角膜炎」、「角膜びらん(ただれ)」を引き起こし、視覚障害が残るケースもありますから注意してください。


病院ではどんな検査をするの?
 IgE抗体の有無や種類、アレルギーの程度を診断
 花粉症はアレルギー性鼻炎の一種ですから耳鼻咽喉科で検査します。その上で目の症状が強けれぱ眼科・気管支の症状が強ければ呼吸器科など、症状に応じて診療先を紹介します。
 耳鼻咽喉科ではおもにイラストのような検査を行います。これらの検査によって、IgE抗体の有無や種類、好酸球の増加、アレルギーの程度などを調べ、症状が花粉症によるものかどうか、花粉症の進み方などを診断します。


花粉症の治療は?
 生活指導と薬による治療が中心です
 花粉症と診断されたら、おもに次のような治療を行います。
生活指導・・・できるだけ花粉を吸わないようにする生活法を指導する。花粉情報に注日する、花粉を家内に入れない工夫、花粉を回避するための防具(マスク、メガネなど)を着用するなど。セルフケアのためには症状などを「アレルギー日記」につけておくと有効。
薬による治療・・・抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服薬、外用薬(点鼻薬・点眼薬)、漢方薬などを処方し、症状を抑える。
減感作療法・・・スギ花粉にもヒノキ花粉にもアレルギー反応を起こすために花粉症の症状が数力月にも及ぶ場合や、薬による治療では症状が抑えきれない場合などに行う治療法。
         花粉エキスを薄めた液を繰り返し注射することでアレルギー反応を起こす体質を改善するもの。有効率は5〜6割で、少なくとも3年以上の治療が必要。
手術による治療・・・もともと鼻が弯曲していたり(鼻中隔弯曲)、鼻の粘膜が腫れて肉厚になっていたり、鼻内にポリープができているために通気性が悪く、鼻づまりを悪化させているケースがある。
 このような場合は手術によって治療する。


鼻水、鼻づまりに効く内服薬は?
 抗ヒスタミン薬と抗アレルギー薬
 医師が処方する花粉症の内服薬は「抗ヒスタミン薬」と「抗アレルギー薬」の2種類が主流となっています。
 抗ヒスタミン薬はすでに出てしまった鼻水や鼻づまり、目のかゆみなどの症状を抑える薬で、ヒスタミンが作用しないように働きます。服用すると速やかに血液中に移行して鼻腔や目の粘膜に到達します。また。「メキタジン製剤」は鼻づまりへの効果も高くなっています。眠気と倦怠感が起こることがあります。
 抗アレルギー薬は肥満細胞を安定させ、ヒスタミンなどの化学物質が生成、遊離するのを抑制する
とともに、化学物質の作用を阻止する薬で、アレルギー反応を予防できます。抗アレルギー薬には抗ヒスタミン作用のある「塩基性」タイプと作用を持たない「酸性」タイプがあります。塩基性タイプは即効性はありますが、眠気や倦怠感などが出やすく、酸性タイプは即効性は期待できませんが、副作用が出にくいのが特徴です。
 市販されている大衆薬には抗ヒスタミン薬、鼻づまりを抑える血管収縮薬、鼻水の分泌を抑える分泌抑制薬(抗コリン葉)等が入ったものもあるので、薬剤師の方と相談して購入してください。

 とくに今年のように花粉量の多い年は、症状が出始めたらすぐに薬を使用し、花粉シーズンが終わるまで続けることが悪化させないコツです。症状の軽いときは点鼻薬だけの使用でもいいのですが、症状が強く出るときは、内服薬と点鼻薬の併用をおすすめします。
 花粉量の多い年は、まず薬局・薬店で市販薬を購入し、使っても症状が改善されないときには耳鼻咽喉科で診察を受けてください


アレルギー性結膜炎に効く薬は?
 抗アレルギー薬の点眼薬が効果大
 目の症状が強くない場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服薬を服用することで多くは改善します。
 内服薬でも症状がよくならないときは抗アレルギー薬の点眼薬を使用します。現在、使われている抗アレルギー薬の点眼薬は、「インタール」と「ザジデン」、「エリックス」などです。抗アレルギー薬の点眼薬は重篤な副作用はありませんが、妊娠中や授乳中の女性は医師の指示に従ってください。
 通常。孔アレルギー薬の点眼薬でも症状が改善されない場合は、局所用ステロイド薬の点眼薬を使います。ステロイド薬とは副腎皮質ホルモン
を主剤にした薬で、副作用が起こりやすいために使用を躊躇する人も多いようです。ステロイド薬の点眼薬には「フルメトロン」、「リンデロン」などがあります。充血の程度によって使い分けられるようになっていますので、症状の重い人は医師の診察を受けてください。ステロイド薬の点眼薬は1日に2〜4回の点眼で、症状はすぐに改善します。ただし、緑内障になったことのある人や現在、治療している人は使用できません。
 市販されている大衆薬の中には目のかゆみを抑える抗ヒスタミン薬、充血を抑える充血除去剤(血管収縮剤)、まぶたのはれなどを抑える抗炎症薬等が入ったものもあるので、薬剤師の方と相談して購入してください。
ステロイド点眼薬は安心?
 点眼用のステロイド薬は目の炎症を即座に改善する効果ありますが、連用すると緑内障やステロイド性白内障、角膜ヘルペス、角膜真菌症などの副作用を起こすケースがあります。ですから、自分勝手にステロイド薬を使い続けたりせず、必ず医師の指示に従ってください。
点眼薬の上手な使用法は?
 冷たい水で洗顔して花粉を流してから使用
 点眼薬をさすときは、冷たい水で軽く顔と目を洗い、結膜に付いた花粉を洗い流しておくと、効き目を高めることができます。いっょに手もせっけんでよく洗って清潔にしておきましよう。
 抗アレルギー薬の内服薬は、通常、予防のために予測される花粉飛散開始日の約2週問前から服用を始めますが、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の点眼薬は即効性があるため、症状が出てから使用してもすぐに効果が現れます。
 かゆくなったら両目交互に1回に2〜3滴ずつ、1日4回ぐらい規則正しく続ければ、効果は持続し、症状を抑えることができます。
 目のかゆみや充血があるとき、かたく絞ったタオルやガーゼなどで目を冷やすと炎症が抑えられて一時的に症状が軽くなることがあります。ただし、保冷剤や氷のうを直接、目にあてるとまぶたを通して角膜を刺激しますので避けてください。。

コンタクトレンズは使ってもいいの?
 目を傷つけるおそれがあるので使用しないこと
 花粉症によって目の炎症が起こっているときはコンタクトレンズの使用は中止してください。
 目のかゆみが起こったとき、コンタクトレンズが入った状態で、つい目をこすってしまうと、結膜が傷ついてしまうケースがあるからです。
 また、花粉症の治療薬である点眼薬の中には、コンタクトレンズを着けたまま、さしてはいけないタイプのものもあります。
 ですから、花粉症のシーズン中だけはメガネで我慢するようにしましよう。メガネは花粉が目の粘膜に付くのを予防する効果もあります。左右の視力が大きく異なったり、強い視力障害があって、どうしてもコンタクトレンズを使用なけれぱならない人は、眼科医に相談してください。

花粉症を緩和させる食事法は?
 ヒスタミンやコリンを含む食品を控える
 花粉症でも食物アレルギーを合併していない限り、普通に食事をして大丈夫です。ただし、食生活の欧米化に伴ってアレルギー疾患が増加していますし、高タンバク・高脂肪の食事が体内でIgE抗体をつくる手助けをするという報告もあります。
 タンパク質や脂肪を多く含む牛肉や豚肉、牛乳、バターなどは摂り過ぎないように、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンやコリンは実は食物にも含まれているのです。これらを多く含む食品は「仮性アレルゲン」といって、繰り返し多量に食べるとアレルギー症状を悪化させることがありますから注意が必要です。また、食品添加物もアレルギーの誘囚となりますので、できるだけ摂らないよう気を配ってください。
食品添加物の種類と含む食品
種類 食品添加物の名称 主な使用食品
着色料 タートラジン(食用黄色4号)サンセットイエロー(食用黄色5号)
アマランス(食用赤色2号)
ニューコクシン(食用赤色102号)
漬物、つくだ煮、菓子、清涼飲料水、ジャム、たらこ、農水産加工品など
保存料 安息香酸ナトリウム
パラベン類
清涼飲料水、しょう油、マーガリンなど
酸化防止剤
発色剤
亜硝酸ナトリウム・硝酸塩 かんぴょう、こんにゃく、ゼラチンなど
調味料 グルタミン酸ソーダ インスタントラーメン、だしの素など
着香料 ベンジルアルコール 菓子、清涼飲料水など


花粉症を緩和させる生活法は?
 花粉を遠ざけるように規則ただしい生活を
症状緩和のためのポイントは次の通り。
●テレピや新聞、インターネットなどで花粉情報を手に入れ、花粉量の多い日は外出しないようにする。
●帽子、マスク、メガネなどを着用し、花粉が鼻や日に付くことをシヤットアウトする。化粉が室内に入らないよう、飛散量の多い日にはなるべく窓を開けないようにする。また、外出から戻った際は衣類や髪に付いた花粉を戸外でよく払う。洗濯物を外に干さない。
●乾布摩擦や冷水摩擦などで皮膚を鍛える。
●体力を増強する。
●自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスがたまらないようにする。
●十分に睡眠をとる。

 鼻水・鼻づまりは蒸気でうるおし温めて、血液の滞りを改善すると症状が楽になります。
 アレルギー性鼻炎はストレスによって症状が悪化しますので、できるだけリラックスを心がけましょう。
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