「大腸ガン」
 主要死因別死亡率の推移によると、生活習慣病と呼ばれる疾患のうち心疾患(心筋梗塞など)と脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)が近年増加傾向が認められなくなってきているのに対し、悪性新生物(ガン)だけが増加傾向にあります。
 中でも大腸ガンによる死亡率は急激に増加しており、近い将来、ガンの中でも最も多く見られるようになると指摘されています。大腸ガン増加の原因として「食生活の欧米化」と腸内細菌との関係が注目されています。
 大腸ガンは早期に発見し、治療すれば治る病気です。腸の健康を保つとともに、定期検診を行い、早期発見を心がけることが大切です。
   大腸ガンを巡る最近の話題
杏林大学客員教授 秦先生、脂肪摂取率の高さに警鐘、虚血性心疾患だけでなく大腸ガン.乳ガンが将来的に増加(日刊薬業1999.7.6)
 杏林大学医学部客員教授の秦葭哉先生は、大阪市内で開かれた「高脂血症の診断と治療」につい;ての講演で、日本では国民全体の脂肪摂取比率が平均25%を突破し、動脈硬化の危険因子であるコレステロール値が上昇の一途をたどっていると警告。
 日本動脈硬化学会が1998年昨年作成し
た高脂血症診療ガイドラインはこのような時代背景を踏まえて作成されたと経緯を説明し、今後、国家的規模で脂肪摂取を極力控える食生活改善の啓蒙を図る一方、高脂血症思者の治療を積極的に進める必要性があるとの見解を示した。
 秦先生によると、脂肪摂取比率は若年者ほど高く、97年の調査では50歳以下では上限とされる25%を大幅に超え、7〜14歳では30%を超えている。脂肪由来のエネJレギーが20%を超えると、虚血性心疾患が急増するとともに大腸ガン、乳ガンなどのガン疾患が増加するため、将来的には、現在の若年者の高齢化に伴う疾病出現に注意を払う必要があると指摘した。若年者に著しい食生活の欧米化の改善を強く求めた。

大阪府立成人病センター石川秀樹先生は、2015年には大腸ガンが、ガン発生率のトップに立つと、学会で発表(APEX NO188 1999.2.1)
 大阪府立成人病センター研究部第10部の石川秀樹先生は、第33回日本成人病学会シンポジウム「成人病-ライフスタイルの影響」の講演で、日本人でも大腸ガンの発生率が増加しており、国内のガン催患の将来予測をみると、2015年には大腸ガンが発生率のトップに立っものとみられていると発言。
 多くの疫学調査から、大腸ガンの発生には食事や連動などの生活習慣が強く関与していることが示されていることから、石川先生らのグループでは、1993年から、大腸ガンの発生予防の臨床試験を実施していると報告。臨床試験の対象は、大腸ガンの高危険度群患者と考えられる多発性大腸腫蕩(腺腫、早期大腸ガン)の既往者または家族性大腸腺腫患者。まず患者を食事指導のみ群と食事指導+小麦ふすまピスケット摂取群の2グループに無作為割付けし、2年目と4年目に全大腸内視鏡検査を施行する。最終評価指標は新規の大腸腫蕩の発生であり、ほかに大腸粘膜の細胞増殖能などの複数の生物学的指標を採用している。
 1998年9月に患者エントリーを終了しており、2001年9月に解析が終了する予定。
日本人のガンの傾向
 グラフ大腸ガンは日木では急激に増加しており、近い将来胃ガン、肺ガンを抜いて日本人に最も多く見られるガンになることが予測されています。
 主なガンの年齢調整死亡率の動向と将来推計(厚生省rガン検診の有効性評価に関する研究斑」報告書1998年より)を右図に示しました。
 以前は胃ガンによる死亡率が、男女共に圧倒的に高かったのです。しかし、その状況も大きく変化しつつあり、男性では1993年に肺ガンが胃ガンを抜き、死亡率の第一位になっています。多くのガンの中で、死亡率が低下しているのは、胃ガンと子宮ガンです。反対に、肺ガン・大腸ガン・肝臓ガン・乳ガンなどは上昇傾向を示し、特に肺ガンと大腸ガンは著しく上昇しています。この傾向は今後とも続くと考えられています。
 こういった現象は、日本人の生活習慣の変化に原因があると考えられます。ガンの発生には、喫煙、食事・生活環境などの外部因子が大きくかかわっているため、ライフスタイルの変化に伴い、発生するガンの種類も変化してきたのです。
特に大腸ガン増加の最大の理由として指摘されているのが一食生活の欧米化(高タンパク・高脂肪・低食物繊維食)です。近年、日本人は動物性の脂肪やタンパク質を非常に多くとるようになりました。その反面、食物繊維をとる量は減少しています。このような食事の欧米化が、欧米に多い大腸ガンを増やす原因になっていると思われます。
大腸ガンのおきやすい部位
 大腸ガンは大腸の部位によって、ガンの発生する頻度がかなり異なっています。
 大腸ガンの発生部位は左図の通りです。
 大腸ガンが特にできやすいのは、肛門に近い直腸とS状結腸で、全体のうち約70%がここにできています。
 便の水分は大腸でも吸収されます。水分が吸収されると、便のかさが小さくなり、便に含まれていた発ガン因子の割合が高くなります。便の水分が吸収されても便のかさが大きけれぱ問題はありません。しかし、便のかさが小さい場合は便中の発ガン因子の割合が高くなっているため、腸管を刺激しやすい状態になっています。
 また、結腸や直腸では便の動きが非常にゆっくりになるため、他の部位に比ぺて便が長く留まり、より腸管を刺激します。ただし、発ガン因子による刺激ですぐにガンになるわけではありません。普通、ガンになるまでには20〜30年かかるといわれています。
   腸内細菌による生物学的作用
 大腸には100種類100兆個もの細菌が棲息しており、これらの腸内細菌は、消化・分解されずに大腸まできた食物の残りかすを、腐敗・発酵させ、糞便形成の働きをします。また、いわゆる善玉菌であるピフィズス菌、アシドフィルス菌やフェカリス菌などの乳酸菌が産生する乳酸と種々の有機酸は、腸内PHを酸性側に傾けると共に、病原菌の増殖を抑え、異常醗酵・腐敗を抑えます。また、乳酸菌が産生する乳酸によって腸管粘膜が刺激され、腸管粘膜の血流量を増加させると共に腸管運動を活発にし、便を速やかに体外に排出させる働きをもっています。
       ガンが発症するまで
ガン発症まで 発ガン因子などによる刺激で、正常細胞がすぐにガン化することはありません。その後更に、いろいろな刺激が加わると、やがてガン細胞となり、その数が増えて“ガン"となってくるのです(多段階発ガン説)。
 この期間は普通20〜30年かかるといわれています。
 ガンの予防"で、ガンの始まりと進行を遅くすることが考えられています。予防しなかった場合、例えぱ50歳でガン化が始まったとして、80歳で発症したとします。一方、予防によってガン化の始まりを60歳まで遅らせ、進行の速度を遅くすれぱ、発症を100歳まで延ぱすことができます。
大腸ガンはなぜ起こるか
 大腸ガンは増加の一途をたどっています。その最大の理由として考えられているのが、食生活の欧米化(高タンパク・高脂肪食・低食物繊維食)です。
 ただし、欧米化の食事そのものに発ガン因子が多く含まれているのではなく、欧米化食事に多いたんぱく質や脂肪が腸内の悪玉菌によって発ガン因子に変えられてしまうのです。また、欧米型食事では食物繊維が少ないことも大腸のリスクを高めると言われています。
大腸ガンの症状
 大腸ガンは、あまり自覚症状はありませんが、「腹痛や下痢、便秘、便が細くなる」などの症状が出ることがあります。また、直腸に大きなガンができた場合には排便しても「便意が残る」こともあります。しかし、これらの症状は、ガンではなくてもよく起こります。 大腸ガンで最も注意を要する症状は「血便」です。
(1)便通異常(腹痛、下痢、便秘、便が細くなる)
 ガン組織が大きくなって腸の内腔が狭くなり、便通が悪くなって起こります。それてにより便が細くなったり、残便感が見られるようになります。また、下痢が起こったり、
下痢と便秘が交互に見られることもあります。
それに対応して、お腹が膨らんだような感じがしたり、腹痛が起きたりします。
(2)便意が残る
 直腸に大きなガンがある場合、排便しても「便意が残る」ことがあります。
普通は直腸に便が達すると、その刺激によって便意が起こりますが、直腸にガンができているとそれが刺激になって便意をもよおしてしまうからです。
(3)出血(血便、下血)
 大腸ガンのサインとしては最も代表的です。
便がガンの表面をこすることによって、便に血が混じったり下血したりします。この場合、ガンが直腸やS状結腸にできたときには、目で見て分かる程度の血便ですが、もっと奥の方(盲腸、上行結腸など)にできたときや、より早い時期には出血が分かりにくくなります(潜血)。
(4)貧血、疲れやすい、動惇
 大腸の奥の方(盲腸、上行結腸など)にできたときやより早い時期には、出血が分かりにくく、血便に気づかないで過ごしてしまうことがあ
ります。この場含、長期間続いてしまうことがあり、貧血がひどくなり、疲れやすい、動惇がするなど体調が悪くなって発見される場合があります。
 痔と間違われやすい出血
 血便は大腸ガンの重要な症状ですが、痔と問違われやすく、発見が遅れることがあります。肛門に近い直腸やS状結腸にガンができたときには、便の外側に糸を引くような赤い血がっくことがあります。最初は痛くもかゆくもなく・痔一だろうと勝手に自己診断してしまい、放置しておくと、やがてガンが大きくなり、便通異常や腹痛などの症状と共に血のかたまりや粘液がでたり、するようになります。血便がでたときには、痔だと思っても、まず診察を受けるよう指導して下さい。
 また、痔だとわかっても、定期的に診察を受けるよう指導して下さい。
ガンの進行度とタイプについて
【進行度(早期ガンと進行ガン)】
 大腸壁は、大きく分けて内側から「粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜」の4層からできています。ガンはまず粘膜から発生し、次第に大きさと深さを増して、粘膜下層、固有筋層、簑膜へと浸潤していきます。
 ・早期ガン…ガンが粘膜下層までにとどまっているもの
 ・進行ガン…ガンが固有筋層にまで達しているもの
進行ガンの場合は、リンパ節や肝臓に転移している可能性が高い
【夕ィプ】
 大腸ガンには「ポリープ"がガン化するタイプ」と「正常粘膜から発生するタイプ」に分かれます。
 大腸ポリープは大部分が良性のもので、ガンの心配はありませんが、タイプによってはガンになりやすいものもあります。また、初めは良性であっても、その後ガン化することがあります。
ボリープとは臓器の粘膜から隆起した瘤(腫癌)の総称です。
大腸ガン検査・・・・これらの検査は安田診療所・鈴木医院などで行っています。
 大腸ガンの検査には、集団検診などでスクリーニング(ふるい分け)のために行われている「便潜血検査」、直腸管を調べる「直腸指診」、更に大腸全体を詳しく調べる「エックス線検査」、「内視鏡検査」があります。
(1)便潜血検査(免疫便潜血反応検査)
 便潜血検査は、消化管粘膜から出た血液が、便の中に混じっていないかを免疫学的・化学的手段で調べる検査です。ほんの少量でも血が混じっていれぱ「陽性」の反応が出ますが、その場合、必ずしも大腸ガンとは限りません。便潜血検査には1回便をとる「1日法」と2日連続して2回便をとる「2日法」があります。
 便潜血検査は、地方自治体が行う大腸ガン検診などで行っています。早期ガンは約50%、進行ガンは約90%の割含で発見できます。
 *6老人保健法では.大腸ガン検診は40歳以上の人を対象に行っています。
(2)直腸指診
 直腸指診は、医師が肛門から指を入れて直腸にガンができているかを調べる検査です。直腸の中でも、指の届く範囲しか調ぺられませんが、この部分にできるガンが多いことから、比較的簡単に、かなりの確率でガンを発見することができる方法といえます。
(3)エックス線検査
 エックス線検査は肛門から造影剤を注入して行う注腸造影検査です。大腸全体を調べることができます。
(4)内視鏡検査
 内視鏡検査は、肛門から内視鏡(コロノスコープ)を挿入して、大腸の粘膜を調ぺる検査です。この検査では同時にポリープについても調べます。ガンが疑わしい病変やポリープが見つかったときには、内視鏡を使った切除術(ポリペクトミー)によって、その組織を切除し、取り出してからガンかどうかを調ぺます。つまり、検査、診断、更にガンの場合は治療も同時に行うことができるわけです。
郵便検診について
 急増している大腸ガンの手軽な検査方法として自宅で便を採取し、専用の容器で郵送する方法があります。
この方法は血液が便の中に混じっていないかを免疫学的・化学的手段で調べる検査です。

 申込書が届き次第、便潜血検査キットー式、(1)便潜血キット2日分、(2)実施説明書、(3)問診票、(4)検査料
振込用紙、が送られます。
 注)検査料の振込用紙も同封されているので、振込も同時に行便を2日間、潜血スライド(検査キット)に塗り、問診票と共に研究所に郵送します。来院する必要はないので.仕事をしながら受検できます。
 専門のスタッフが検査し、迅速に精密検査が必要な方を選別します。

 検査後、郵送にて各個人宛に結果が送付されます。検査キット送付から1週閤程度で知らせが届きます。
標準方式は、安全で苦痛が少ない「S状結腸内視鏡と注腸X腺検査」の組み合わせなので、気軽に受けられます。
 愛知診断技術振興財団 医療医科学研究所へリンク
大腸ガンの治療
 大腸ガンは抗ガン剤や放射線治療が効きにくいガンですが、細胞の悪性度が割合低く、発育が比較的ゆっくりなので、ガン病巣を根こそぎ取る手術が最も有効であり、第一に選択されます。比較的小さく、早期のものでは内視鏡的切除も可能であり、現在まで外科的切除が大腸ガン治療の主体となっています。
 また、場合によっては放射線を使った放射線治療や抗ガン剤を使った化学的治療などが併用されることがあります。
 病巣部が隆起している場合は内視鏡の先に付けたワイヤーをかけて、高周波電流を流して病巣部を根元から焼き切ります。焼き切った病巣部は、鉗子でつかんで取り出します。
 また、病巣部が平らな場合は、そのままではワイヤーがかけられないので、内視鏡の先に付けた注射器で病巣部を盛り上げてから、同じように切除します。
大腸ガンを予防しよう
(1)親族に大腸ガンの人がいる人
 ガンは遺伝性の病気ではありませんが、親や兄弟に大腸ガンの人がいると、大腸ガンになる確率が高くなります。また、「家族性大腸腺腫」という遺伝性の病気では、ポリープがガン化する恐れもあるため、常に検査を受けることが必要です
(2)過去に大腸ポリーブがあった人
 「大腸ポリープ」は、大部分は良性のものですが、一部がガン化して大腸ガンになることもあります。過去にポリープがあったり、摘出したことがある人は、大腸ガンの可能性があるため、定期的に検査を受ける必要があります。

(3)潰蕩性大腸炎を長期間患っている人
 「潰蕩性大腸炎」は、大腸に潰蕩やびらんができる炎症性疾患です。原因がはっきりしないために大変治りにくく、治りきらないまま10〜20年経遇すると大腸ガンが発生することも多いので注意が必要です。
(4)下腹部の放射線治療を経験している人
 子宮ガン、卵巣ガン、勝脱ガン、前立腺ガンなどで放射線治療を経験している人は、その影響で大腸ガンになることがあります。
 特に、普段から外食が多く高タンパク・高脂肪食になりがちな人や食物繊維をあまりとらない人は積極的に検査を受けるようにしましょう。
 また、大腸ガンは50〜70歳代にかけて多く、60歳代に最も多い病気です。早期発見のためにも、40歳代に入ったら、定期的に検診を受けることをおすすめします。
情報提供
わかもと製薬株式会社 学術部
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